不妊診療

近年では10人に1-2人が不妊症と診断されるようになっています。

どのくらい赤ちゃんができなければ、産婦人科に相談したら良いのでしょうか?

 

従来は、赤ちゃんがほしいと思ってから2年間妊娠しない場合に不妊症と診断されていましたが、最近では1年妊娠しない場合には不妊と考えて、

検査や治療を進めていくことが必要であるとされています。

 

 

当院では人工授精までの治療に対応いたします。

お気軽にご相談いただければと思います。

 

 

不妊症の原因・検査

 

妊娠を目指すためには女性側だけがんばっても不十分なことが多く、男性の協力が不可欠になります。

女性側・男性側の主な不妊の原因としては以下のようなものが挙げられます。

 

女性側

① 排卵がうまくいっていない(排卵因子)

 排卵しない場合には妊娠することはできません。基礎体温表をつけていただき排卵のチェックを行っていきます。

 近年、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS 後述)の頻度が増加してきているといわれています。

 基礎体温チェックに加え、ホルモン採血、超音波検査などで原因を検索していきます。

 自然排卵が難しい場合には、排卵誘発剤を使用していきます。

 

② 卵管が通っていない(卵管因子)

 お腹の中で排卵した後、卵子は子宮の中まで移動して受精することになります。

 卵管がつまっている場合には、卵子が子宮の中までたどり着くことができず、妊娠することができません。

 クラミジア感染症がある場合には、卵管閉鎖を起こすことがあるため、事前にチェックしておくことが重要です。

 卵管造影検査、卵管通水検査などで卵管の通過性を確認していきます。

 当院では卵管通水検査を行っています。

 

男性側

① 精子の数・運動率が少ない

 膣内の射精された精子は、子宮内まで移動して卵子と受精することになります。

 このため数が少ない場合や、運動率が悪い場合には、精子が子宮内にたどり着くことができず、妊娠する可能性が低くなります。

 精液検査を行い、精液中の精子の数、運動率をチェックしていきます。

 

② 性機能障害

 EDなど性行為がうまく出来ない場合や膣内での射精まで達しない場合には、人工受精を行っていくことになります。

 

 

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

 

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、近年、女性の排卵障害・月経不順の原因として増加傾向にあります。

報告によっては10人に1人にPCOSが認められるといわれています。

 

正常な卵巣における排卵では、卵胞が卵巣の中で発育しおよそ直径2cmくらいになったところで、

卵胞が破れ、中にある卵細胞が卵巣から出ていきます(図上)。

多嚢胞性卵巣症候群では、卵胞が卵巣の中にたくさん存在するのですが、1cm前後の大きさにしかならず

排卵が起こりにくくなっています。卵巣の表面の膜は肥厚しています(図下)。

 

原因は、まだ現在でも明らかになっていませんが、① 脳下垂体からのLHというホルモンの分泌異常、

② 体内におけるインスリンの増加、③ 卵巣での男性ホルモン産生の増加、の関連が考えられています。

 

以下のような症状がある方は、多嚢胞性卵巣症候群のチェックを受けることをお勧めいたします。

① 月経不順 (排卵が起こりにくいため)

    ・ 数ヶ月生理がこない

    ・ 生理がきちんと1週間くらいで止まらない

    ・ 生理の時の出血量が極端に多い(もしくは少ない)

② 多毛症状、にきび、声が低いなどの男性化徴候

③ 太りやすい、肥満傾向

 

診断は、超音波検査血液検査で行います。

超音波検査では、卵巣の中に多数の卵胞が認められることを確認します。

血液検査では、脳下垂体から分泌されるLHとFSHというホルモンと男性ホルモンの値を調べます。

(※ 性交渉の経験のない方では、超音波検査はおなかの上から行います)

 

治療は妊娠希望のある場合とない場合で異なります。

妊娠希望のある場合には、排卵を起こす薬剤を用いて治療していきます。

最初は、クロミフェンという内服薬で行い、治療がうまくいかない場合にはFSH製剤(注射)に変更します。

クロミフェン内服に合わせて、メトホルミンという経口血糖降下剤と併用すると排卵率が上がることが報告されています。

妊娠希望のない場合には、月経不順に対する治療が主になります。低用量ピルなどを用いて規則的な月経を起こしていきます。

 

 

 また、多嚢胞性卵巣症候群の女性においては、肥満や軽い糖尿病の傾向がある場合がありますので、糖負荷試験を行った上で食事療法・運動療法を行うことも重要です。

不妊症の治療

大きく分けて ① タイミング療法 ② 人工授精 ③ 体外受精 の3つのステップがあります。

当院では人工授精までの治療に対応しております。

 

① タイミング療法

 基礎体温・排卵検査薬・超音波検査などを用い、排卵のタイミングをチェックしていきます。

 排卵の時期に性交をもっていただくことで妊娠を目指す治療です。

 

② 人工授精

 タイミング療法でなかなか妊娠しない場合、男性側の精液の所見が悪い場合に行います。

 精子を子宮内に注入することで、妊娠を目指す治療になります。

 卵管が両方ともにつまっている場合には適応にならず、体外受精へ進んでいきます。

 

③ 体外受精

 卵子を適切な時期に摘出(採卵)し、体外で精子と受精させ、子宮の中に戻す治療になります。

 人工授精でなかなか妊娠しない場合や、極端に精子の所見が悪い場合に適応になります。