生理(月経)のトラブル

このページでは、生理(月経)のトラブルについて解説します。

また、旅行・イベントなどで月経をずらしたい場合の対応、月経前症候群についてもお話します。

正常な月経周期とは?

 

正常な月経周期の中で、女性は妊娠に向けての準備を行っています。

 

正常な月経のサイクルは、
① 卵巣の中で卵胞が成長します。
  (成長する卵胞から子宮内膜の準備をうながすホルモンが分泌されます)
  卵胞がある一定の大きさになると排卵します。
② 排卵後、卵巣内に黄体が形成されます。
  (形成された黄体から妊娠を維持するホルモンが分泌されます)
③ 妊娠が成立しない場合には、子宮内膜は体外に排出され、次のサイクルの準備が開始されます。

 

つまり、正常に月経が起こることは、女性の体内で妊娠の準備が正しく行われていることを示しています。

いいかえると、月経に異常があるということは、妊娠の準備がうまくいっていない可能性があるということになります。

月経異常とは?

 

月経(生理)の異常には、周期、出血期間、症状(出血量・痛み)の異常があります。

 

① 月経周期の異常
 正常な月経の周期は25~38日の間であるとされます。個人差がありますので、必ずしもこの範囲に入っている必要はありませんが、

 周期が短い場合・長い場合には一度検査を受けることをお勧めいたします。
 特に月経が3ヶ月以上来ない場合には「無月経」とされ、将来の妊娠を考えた場合には検査・治療を受けておく必要がありますので

 早めの来院をお勧めいたします。

 

② 出血量の異常
 月経の出血が多すぎる場合(過多月経)には、ホルモンの異常の他に子宮筋腫などの可能性があります。

 逆に少なすぎる場合(過少月経)の場合には、月経周期の中で適切に妊娠の準備が行われていない可能性があります。

 

 

③ 月経困難症
 月経前後の腹痛・腰痛などの症状、また痛みに伴う吐き気などの症状が強い場合にも、子宮筋腫・子宮内膜症などの病気の可能性が考えられます。

 また、体質的に月経時の症状が強い方もおられますが、この場合には正しく鎮痛剤などを使用することで症状の緩和をはかることになります。

月経前症候群(PMS Premenstrual Syndrome)

 

月経前症候群とは、月経前の1-14日前から月経までの間に起こるさまざまな身体と心の不調のことをいいます。症状は本当に多岐にわたり、150-200種類もの異常が報告されています。

また最近の報告では、全女性の50%が月経前症候群の症状に悩んでいるとの報告があり、身近でかつ非常につらい病態であるといえます。

代表的な症状を下に挙げます。

 

こころの症状

・抑うつ ・怒り ・ いらだち ・不安 ・混乱

身体の症状

・ 頭痛 ・乳房の痛み ・腹部膨満感 ・頭痛 ・四肢のむくみ

※ 月経周期に合わせ症状が出現し、月経開始後4日以内に症状が軽快するのが特徴です。

 

原因はまだ明らかになっていませんが、もともとは “luteal phase dysphoric disorder (黄体期の不調)” として認識されていたこともあり、排卵後に卵巣から分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響が考えられています。

その他に、排卵後に卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が減ることにより、ネガティブな気持ちを引き起こすといわれています。

排卵期までは、卵胞からエストロゲンが主に分泌されます(上図)。その後排卵後は、卵胞は黄体に変化しプロゲストロンが主に分泌されます(下図)。このホルモンの体内環境が月経前緊張症と関連するということになります。

 

(治療)

まず、ご自分の病状の把握のために、基礎体温表をつけることをお勧めします。基礎体温表からは、排卵の有無や黄体機能など多くの情報が得られ、また、月経前症候群の診断のために黄体期と症状の関係をみるために非常に重要です。

 

治療は薬剤を使用しない方法と使用する方法に大別されます。

 

薬剤と使わない方法としては、生活習慣の改善、ビタミン・ミネラルの摂取ということになります。食事では脂肪や塩分、砂糖を控える食事に、またカフェインやアルコールを控える食事を心がけます。炭水化物や食物線維を多めにとるようにしましょう。ビタミン・ミネラルではビタミンB6の摂取、カルシウム・ビタミンDの摂取を行います。

しかし、軽症例以外ではなかなか改善しないのが実状で、症状が強い場合にはお薬によるコントロールを行うことになります。

 

① 低用量ピル 

排卵を抑制し、月経周期をコントロールすることで症状の改善が認められます。

 

② 選択的セロトニン再取り込み阻害役(SSRI)

月経前症候群に伴ううつ症状のコントロールのために使用されます。

 

その他の治療としては個別の症状(頭痛、むくみなど)に対応してお薬を処方していきます。

症状の強い方では1ヶ月の半分以上症状に苦しむこともあります。毎日の生活がつまらなく感じられることも多いと思います。症状に思い当たる場合には、日常生活の質を改善するために一度産婦人科受診をしてみてはいかがでしょうか?

月経移動(生理をずらす)について

 

ご旅行、いろいろなお仕事の都合、試験、スポーツの大会などが生理の時期にあたると、スケジュール通りにいかないばかりか、試験結果やスポーツの試合の結果にも影響を与えてしまいます。このような場合には、一時的にホルモン剤(中用量ピル)を使用することで予定のスケジュールに生理が重ならないようにすることが可能です。


ホルモン剤の使用による副作用は吐き気・嘔吐が主で、長期的な影響はないと考えてよいと思います。 ① 生理を先に来させてしまう方法、② 予定の生理を後ろにずらす方法、の2通りの選択があります。

 

 

 

① 生理を先に来させてしまう方法
前回の生理が始まって5日目くらいからホルモン剤を内服します。生理を来させたい日の3-5日前に内服を止めます

(ホルモン剤の使用は10日以上必要です)。
この方法は、ホルモン剤内服の副作用や生理前の不快な症状がないため、体調も良い時期にいろいろなご予定のスケジュールを調整することが可能です。しかし、時間的に2ヶ月くらい前からの調整が必要ですので、時間的に余裕をもってご相談ください。

 

② 生理を後ろにずらす方法
時間的に余裕のない場合に選択します。予定の生理開始日の3-5日前からホルモン剤を内服し、生理が開始しても良い日になったら内服を終了します。
この方法のデメリットは、吐き気・嘔吐のホルモン剤使用による副作用が強い場合あることや、生理前の症状(腰痛・腹痛・頭痛・いらいらなど)が強い方はお薬の使用中は症状が続くことになることが挙げられます。
あらかじめスケジュールが分かっている場合には、可能な限り①の生理を先に来させてしまう方法をおすすめいたします。